2012.11.20(火) 19:00 しらかわホール
出演
藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)、ヴォルフラム・リーガー(ピアノ)
曲目
シューベルト:湖で D746、水面で歌う D774、ゴンドラの船頭 D808、湖上にて D543b、流れ D693
マーラー:『亡き子をしのぶ歌』
1. 今太陽が眩しく昇ろうとしている
マーラー:『亡き子をしのぶ歌』
1. 今太陽が眩しく昇ろうとしている
2. なぜそんなに暗い炎を
3. 母さんが扉から
3. 母さんが扉から
4.よく思う、子供達は出掛けただけと
5. こんな天気に
ヴォルフ:ミニョンの歌
ミニョンの歌Ⅰ 語れと命じないで
ミニョンの歌Ⅱ ただ憧れを知る人だけが
ミニョンの歌Ⅲ このままでいさせて
ミニョンの歌 知ってる、レモンの花が咲くあの国を
R.シュトラウス:献呈 op.10-1、何も op.10-2、夜 op.10-3、もの言わぬものたち op.10-6、
5. こんな天気に
ヴォルフ:ミニョンの歌
ミニョンの歌Ⅰ 語れと命じないで
ミニョンの歌Ⅱ ただ憧れを知る人だけが
ミニョンの歌Ⅲ このままでいさせて
ミニョンの歌 知ってる、レモンの花が咲くあの国を
R.シュトラウス:献呈 op.10-1、何も op.10-2、夜 op.10-3、もの言わぬものたち op.10-6、
イヌサフラン op.10-7、万霊節 op.10-8
(アンコール)
R.シュトラウス:あなたの黒髪を私の頭に広げてください op.19-2、チェチーリ op.27-2、
R.シュトラウス:あなたの黒髪を私の頭に広げてください op.19-2、チェチーリ op.27-2、
幸せがいっぱい op.37-1
前回藤村実穂子のリートをここで聴いたのは3年前。オペラでなくほんとはリートを歌いたいという藤村さんは岐阜県出身なので、世界的名声を勝ち得た謂わば凱旋リサイタルのようなものでした。その時のテーマは愛でしたが、今回は東日本大震災の犠牲者に捧げる意味を込めたプログラムでした。暗い寂しい曲をしっとりと歌いました。
藤村さんを初めて聴いたのは2002年バイロイト・デビューでのフリッカでした、それも第1チクルスで。その時の歌唱はもう完璧で、隣の席にいたフランス人が日本人がほとんどいなかったので「おまえは関係者か、フリッカがベストだよ」と声を掛けてきました。私も初めてのバイロイトで興奮気味でしたが、それを聞いて一層嬉しくなりました。その意を伝えようと暫く出待ちしてたのですが、残念ながら会うことができませんでした。それから10年活動の中心はヨーロッパですが、日本でもしばしば歌ってくれるようになりました。
今回久々に彼女を聴いてもうすっかり世界の藤村の風格が出てきたと思いました。真剣に歌ってはいますが一生懸命歌ってる感じが微塵もなく、余裕を持ってふくよかで深い感動を与える歌唱でした。藤村さんのリートは極めてオーソドックスです。オペラチックな感情むき出しでなく、それを一歩胸に押し込んでオブラートで包んだように歌うのでその分あとで感動がじわっと出てきます。オペラには芝居の要素が必要ですがリートは必ずしもそうでないと思います。
ピアノがまた素晴らしかったです。最初の1曲音が大きすぎると思ったらすぐ修正しました。歌唱とよくマッチしたしっとりとした情緒あるピアノで、特に最後の音が静かに消える余韻が印象的でした。
リートは言葉と歌唱と伴奏三位一体の音楽ですからドイツ語の分からない私にとって言葉をリアルタイムで理解できないのが口惜しいです。勿論事前に読んでおきますが暗記までは至りません。ですからリートの良さを十分には理解できてないと思います。リートは短い歌詞の中で意味を捉えなければならないのでオペラみたいに字幕をつけてくれると有難いのですが、その点テレビはいいですね。
この種のレベルの高い地味なリサイタルは客層が違います。音大生など絶対勉強になると思うので聴いて欲しいと思いますが若い人は少なかったです。